
代表挨拶
Greetings

「本当にありがとうをかたちに」
このなんの変哲もない言葉、長い人生を生きていく中で本気で言われたことありますか?
ありがとう!や、ありがとうございます!は幾度となくもらえても、心からの「本当にありがとう」をもらえた事は数少ないのではないでしょうか?
恥ずかしながら私もその一人です。
そのくらい頂くのが難しい言葉なのか?
そうではなかったのです。
介護の仕事を始めてまだ間もないころのお話です。
102歳になるそのご利用者様はお食事・お風呂・トイレに行く以外は1日のほとんどをベット上で寝て過ごす毎日でした。
認知症のその方は、私と会うたびに「あんた出身は?私は三軒茶屋」と毎回自己紹介から会話が始まるのが日課でした。
そのご利用者様が私や他のヘルパーさんに何かしてもらうたびに伝えていた言葉がありがとうという感謝の言葉でした。
そんなご利用者様も103歳を迎えるころには、体の状態も急激に落ちてしまいお食事を召し上がる量が減り、お風呂も疲れる為か「風呂はいいや」と断ることが多くなり、前にも増して寝て過ごす時間が増えて行きました。
そんなご利用者様がただ一つだけお願いしてくるのが「トイレに連れて行って下さい」それだけでした。
しかし施設介護のお仕事は1人で大勢のご利用者様を対応しなければいけません。
その為そのご利用者様のたった一つのお願いを叶えてあげられない時や、あってはいけないことですが、面倒だと感じて「さっき行きましたよ」と言ってしまうヘルパーさんもいました。
しかしヘルパーさんも人間です。認知症のご利用者様ですから何度トイレに行ってもすぐに忘れてしまうため、「またか…」と面倒だと感じる気持ちも私には十分に理解できました。
ある日、お食事もあまりとっていないご利用者様ですから体力も落ちているためかトイレで便ショックを起こしてしまい意識を失ってしまったのです。
当然その後ミーティングが開かれ、ご利用者様の安全を考えベット上でのおむつ交換でよいのでは?という意見も当然上がりましたが、ご利用者様のたった一つの願いであるトイレに行きたいという思いを尊重して、いつまた便ショックを起こすかわからないけど、訴えがあればトイレに行くという方針で固まりみんなしぶしぶ納得した様子でした。
が、やはりトイレに行くには体力が落ちすぎており、みんなトイレに行くにはとても不安でした。
私も同様です。
結果、ご利用者様が「トイレに連れていって下さい」といわれるたびに会議で決まったトイレに行くという内容はいつの間にかみんな安全をとっておむつをしているからと、トイレに連れて行かなくなってしまいました。
そんなある日、私が出勤するとそのご利用者様の話題でトイレの訴えが多くて困るとヘルパーさん達が話しておりました。
呼び出しのコールが鳴り、私がお部屋に行くと力なくベットの上で起き上がろうとするご利用者様の姿があり、「どうしましたか?」と私が声を掛けると「トイレに連れて行ってください」。
私は不安でしたが、思い切って「わかりました、行きましょう!」するとそのご利用者様は本当にうれしそうな顔で私の手を握って言ってくれた一言が
「本当にありがとう」
私は、私に関わる全ての人たちそして、この会社に関わる全ての人たちの役に立ち「本当にありがとうをかたちに」、この理念を実現していきます。
Cachinnate合同会社 代表社員
野中康雄
